「ゆーきーっ!」
外がいやに騒がしかった。そのくせ昨夜はやけに寒かったから、いくら我ながら寝起きが良いと自負しているマルスでも、起きるのには時間がかかりそうな朝だった。
廊下の物音に睡眠を妨害され、寝返りを打ってから暫くしてドアを蹴破る大きな音が聞こえた。眉を顰めて布団を頭から被るが、すぐに誰かが自分の体を布団の上からゆすってきた。
布団から顔を出すと、ベッドの端からひょっこりと顔をのぞかせているピチュー、ピカチュウと目が合った。マルスがにっこりと笑うと、二匹とも同じように笑顔で返してくれた。
ピチューの頭を撫でて半身を起こすと、同居人であるロイの呻き声が聞こえた。ロイのベッドを見れば、アイスクライマーとプリンがロイを起こそうと必死にロイの体を揺すっていた。
いくら揺すってもロイは起きないので、ポポはナナを持ち上げ、プリンは宙に浮いて、
「起きてーっ!」
そう叫んで、ロイのベッドの上。しかも丁度お腹の辺りに一人と一匹がのしかかってきた。もちろんそんなことをされてはロイも寝ていられるわけも無く、いきなり飛び起きて、
「……やったな!」
そう叫んで、プリンの体をつねる。つねられたプリンは宙に浮いた状態で手足をばたばたさせていた。
プリンを放してあげると、膨れっ面をしてプリンはポポとナナの後ろに隠れてしまった。その姿に、部屋に居た全員が笑い合う。
「それで、こんな朝早くから皆どうしたの?」
「外見てよ! すごいんだよ!」
ベッドから降り、言われたとおりにカーテンを開ける。窓についた水滴を手で拭き取ると、中庭が雪で一面真っ白になっていた。後から嫌々起きたロイも、窓の外の景色を見て感嘆の声を上げる。
「雪だ……」
「ねぇ、ロイ。マルス。中庭で遊ぼうよ!」
隣のロイにそっとアイコンタクトを送ると、ロイが笑って返してくれた。
「わかった。着替えるから少し待っていてくれないかな?」
「……そういえば、ネス達は?」
ロイの言葉に、二人と一匹は目を見合わせて、
「ネスと子供リンクとカービィはリンクとダークを起こしに行ったよ」
「なんだか……危ない組み合わせだなぁ」
ポポとナナは二人して頬を膨らませる。更に二人を真似してピチューとプリンも頬を膨らませる。ポポとナナは膨れっ面のまま、
「まだ何もしてないもん!」
「『まだ』ってことは、する予定はあるんだね……」
ロイが寝巻きから私服に着替えようとクローゼットの扉を開けながら呟いたその直後。隣の、リンクとダークの部屋の方からリンクの悲鳴が聞こえてきた。
「カービィ! 起きないからってダークを吸い込んじゃ駄目!」
リンクの叫び声に、思わずロイと顔を見合わせる。困ったように笑った後、マルスは自分のクローゼットの扉を開けて、ハンガーにかけてあった服を取り出した。
「ロイは、雪を見たことがある?」
雪で真っ白になった中庭のタイルに二人分の足跡を残しながら、マルスは問いかける。ロイは少し考え込んだ後、
「あることは、あります。フェレ……あ、家の領地です。そこは南のほうにあって雪は降らないんですけど、僕の世界の大陸の北の方では一年の殆どが雪で、戦争中そこに進軍した時に、一度」
「そうなんだ。初めて見た時はどう思った?」
また少しロイは考え込んで、
「……綺麗としか言えなかったです。小さい頃からずっと雪が見たかったから、こっそり雪だるまを作って、家臣に見つかってこっ酷く叱られたなぁ」
手の平に降っては溶ける雪を眺めながら、ロイは思い出し笑いを浮かべた。マルスも笑って、
「そっか……僕の国も雪は降らないんだよなぁ。僕も冬になれば雪の降る地方へ軍を進めたことはあったんだけれど、その時の季節が初夏だったから、雪は見られなかったなぁ」
「……つまり、雪を見るのは始めてなんですか?」
マルスは苦笑いを浮かべて、
「まぁ、そういうことになるね」
「じゃあ雪だるまとか……雪合戦とかも……ないんですか?」
「……残念ながらないなぁ」
困ったように、少し悲しそうにマルスが笑うと、ロイはマルスの腕をぐい。と引っ張って、
「駄目です! 雪合戦も雪だるま作りも知らないなんて人生の半分以上損しています!」
「でもロイ、僕はもう18歳だよ……」
「いいえ、大人も子供も関係ありません! 第一マルスはまだ18歳じゃないですか! 僕の軍にも100年以上生きていても雪を見るたびはしゃぐ人だっていました!」
「ロイ? それはもしかしてマムクートじゃあ……?」
どうやらそれは図星だったらしく、ロイは一瞬たじろいだが、それでもマルスの腕を放そうとはしない。
そして、リンクと、中々起きないからカービィに飲み込まれそうになったというダークが後から来て、降り積もる雪を見て、ダークがこの一言。
「……これはなんだ?」
「ダーク……もしかして、雪知らないの?」
黙ってダークは頷き、降り注ぐ雪の一粒を手の平にのせる。手の平にのせた雪がすぐに溶けてしまったことにダークは少し驚いて、
「これが……雪……?」
その言葉に、ロイの血相が変わった。マルスの腕を掴む手とは反対の手でダークの腕を掴んで、
「雪で遊んだことが無いなんて絶対損に決まってます! 雪はこんなに綺麗で、楽しいのに皆どうして……ぶっ!」
ロイの言葉が途中で遮られて、ロイの顔面に雪玉が命中した。噴水の近くに居た子供たちがそれぞれ歓喜の声を上げる。
「このやろー……お返しだ!」
悔しそうにそう叫んで、ロイが足元にあった雪をかき集めて丸め、雪玉をつくる。それを子供たちに作っては投げ、作っては投げていく。ロイに雪玉を投げた子供たちは嬉しそうな叫び声を上げながらロイの雪玉から逃げるべく、散り散りに走り出していく。
マルスも地面の雪をかき集めて雪玉を作り、ロイに手渡していく。雪は思っていた以上に冷たくて、更に今日は手袋をつけていなかったので、もう指先の感覚が無かった。それでも一心不乱に、マルスは雪玉を作ってはロイに手渡す。
ロイの雪玉を投げるペースがより一層速くなって、子供たちの嬉しそうな声が更に大きくなり、自分たちにも雪玉が投げられてくる。
その時、後ろでリンクとダークが小競り合いをしているようだった。必死に雪玉を作っているマルスとロイの耳には話の内容は届かなかったのだが。
だが楽しい時間を粉々に砕くかのように、リンクの叫び声が、
「皆伏せてー!」
言われたとおり中庭に居た全員が伏せると同時に、マルスの背後から何かが投げられた。一瞬雪玉かと思ったが、投げられた何かは黒かった。それは地面にぶつかると同時に爆発を起こし、辺り一帯に強い風を巻き起こした。
「な、何……?」
振り返ると、あわあわと焦った顔をしているリンクと、リンクとはうって変わって、雪の温度にも勝るとも劣らないほど非常に涼しい顔をしているダークが立っていた。
「何で爆弾を投げるの? これは雪合戦だよ? 雪玉を投げるんだよ?」
「白い爆弾を投げているのかと思った」
「爆弾ならちゃんと爆発するだろ……?」
呆れたようなリンクの言葉に、ダークはやっと投げているのが雪玉だと気付いたのか、
「……そうなのか!」
あまりに世間知らずなダークに、三人揃って同時に溜息をついてしまった。しかし、三人の溜息をよそに、子供たちは笑顔でダークに駆け寄って、
「ねぇダーク、今のすっごいおもしろかった! もう一回やってよ!」
「わかった。じゃあもう一回……」
まだ火をつけていない爆弾を取り出したダークの腕をリンクは掴み、
「ネス? ここは寮の中だよ。爆弾なんて本当は使っちゃいけないんだ。だから駄目」
それに対し、ネスだけでなく、子供リンクやポポ、ナナまでつまらなさそうに口を尖らせた。それでもステージ以外の場所で武器を使うのは禁止されているのはここに居る全員知っているので、ちゃんとリンクの言ったことを理解してくれて、また雪合戦に戻った。
「マルスも……雪は初めて見るんだっけ」
リンクの問いに、マルスは苦笑いを浮かべて、
「うん。そうだよ……流石に爆弾を投げたりはしないけどね」
「綺麗だな」
コートについた雪を払い落としながら、ダークが呟く。リンクは大きく溜息をついて、
「……また爆弾投げたりなんてしないでよ」
「お前に怒られたからもうしない」
「怒られなかったらするの?」
ダークは少し考え込み、そして、
「……するかもしれない」
これでは本当にダークが反省しているのか、していないのかよく分からない。リンクはまた大きく溜息を吐いた。
しかしそんなリンクの悩みをよそに、ダークは近くの木に降り積もっていた雪を少しだけ手でつまんで、それを迷わず、口の中に放り入れた。
朝から突拍子も無い行動ばかりしているダークに、リンクがすっかり呆気に取られていることに気付いたのか、ダークはどうした。とリンクに問いかけた。
「……なんで雪を食べてるの?」
「ん……」
ぶっきらぼうな返事をして、ダークが中庭の奥のほうを指差した。ダークが指を指した方向には、実においしそうにシロップのかかった雪を頬張っているヨッシーとカービィが居た。
二匹の近くには、何本ものシロップの瓶が転がっていた。その瓶の数から、いったいどれくらいの雪を食べたのかが容易に想像できた。
「食ったら駄目なのか」
「そんなの駄目に決まってるだろ……」
「あいつらは食ってるのに?」
「あの二匹は胃が特別なの。だから平気なだけ! とにかく君は食べちゃ駄目だ!」
そう怒鳴ってリンクはダークの手の中にあった雪を、ダークの手を掴んで地面に落とした。一瞬ダークが名残惜しそうな表情をしたが、それもお構い無しにリンクはダークの手を掴んだまま、寮内へと引き摺っていた。
「雪の日に君を外に出したら、ろくなことにならないことだけはよーくわかったよ」
「……それは褒め言葉なのか」
「違う!」
外がいやに騒がしかった。そのくせ昨夜はやけに寒かったから、いくら我ながら寝起きが良いと自負しているマルスでも、起きるのには時間がかかりそうな朝だった。
廊下の物音に睡眠を妨害され、寝返りを打ってから暫くしてドアを蹴破る大きな音が聞こえた。眉を顰めて布団を頭から被るが、すぐに誰かが自分の体を布団の上からゆすってきた。
布団から顔を出すと、ベッドの端からひょっこりと顔をのぞかせているピチュー、ピカチュウと目が合った。マルスがにっこりと笑うと、二匹とも同じように笑顔で返してくれた。
ピチューの頭を撫でて半身を起こすと、同居人であるロイの呻き声が聞こえた。ロイのベッドを見れば、アイスクライマーとプリンがロイを起こそうと必死にロイの体を揺すっていた。
いくら揺すってもロイは起きないので、ポポはナナを持ち上げ、プリンは宙に浮いて、
「起きてーっ!」
そう叫んで、ロイのベッドの上。しかも丁度お腹の辺りに一人と一匹がのしかかってきた。もちろんそんなことをされてはロイも寝ていられるわけも無く、いきなり飛び起きて、
「……やったな!」
そう叫んで、プリンの体をつねる。つねられたプリンは宙に浮いた状態で手足をばたばたさせていた。
プリンを放してあげると、膨れっ面をしてプリンはポポとナナの後ろに隠れてしまった。その姿に、部屋に居た全員が笑い合う。
「それで、こんな朝早くから皆どうしたの?」
「外見てよ! すごいんだよ!」
ベッドから降り、言われたとおりにカーテンを開ける。窓についた水滴を手で拭き取ると、中庭が雪で一面真っ白になっていた。後から嫌々起きたロイも、窓の外の景色を見て感嘆の声を上げる。
「雪だ……」
「ねぇ、ロイ。マルス。中庭で遊ぼうよ!」
隣のロイにそっとアイコンタクトを送ると、ロイが笑って返してくれた。
「わかった。着替えるから少し待っていてくれないかな?」
「……そういえば、ネス達は?」
ロイの言葉に、二人と一匹は目を見合わせて、
「ネスと子供リンクとカービィはリンクとダークを起こしに行ったよ」
「なんだか……危ない組み合わせだなぁ」
ポポとナナは二人して頬を膨らませる。更に二人を真似してピチューとプリンも頬を膨らませる。ポポとナナは膨れっ面のまま、
「まだ何もしてないもん!」
「『まだ』ってことは、する予定はあるんだね……」
ロイが寝巻きから私服に着替えようとクローゼットの扉を開けながら呟いたその直後。隣の、リンクとダークの部屋の方からリンクの悲鳴が聞こえてきた。
「カービィ! 起きないからってダークを吸い込んじゃ駄目!」
リンクの叫び声に、思わずロイと顔を見合わせる。困ったように笑った後、マルスは自分のクローゼットの扉を開けて、ハンガーにかけてあった服を取り出した。
「ロイは、雪を見たことがある?」
雪で真っ白になった中庭のタイルに二人分の足跡を残しながら、マルスは問いかける。ロイは少し考え込んだ後、
「あることは、あります。フェレ……あ、家の領地です。そこは南のほうにあって雪は降らないんですけど、僕の世界の大陸の北の方では一年の殆どが雪で、戦争中そこに進軍した時に、一度」
「そうなんだ。初めて見た時はどう思った?」
また少しロイは考え込んで、
「……綺麗としか言えなかったです。小さい頃からずっと雪が見たかったから、こっそり雪だるまを作って、家臣に見つかってこっ酷く叱られたなぁ」
手の平に降っては溶ける雪を眺めながら、ロイは思い出し笑いを浮かべた。マルスも笑って、
「そっか……僕の国も雪は降らないんだよなぁ。僕も冬になれば雪の降る地方へ軍を進めたことはあったんだけれど、その時の季節が初夏だったから、雪は見られなかったなぁ」
「……つまり、雪を見るのは始めてなんですか?」
マルスは苦笑いを浮かべて、
「まぁ、そういうことになるね」
「じゃあ雪だるまとか……雪合戦とかも……ないんですか?」
「……残念ながらないなぁ」
困ったように、少し悲しそうにマルスが笑うと、ロイはマルスの腕をぐい。と引っ張って、
「駄目です! 雪合戦も雪だるま作りも知らないなんて人生の半分以上損しています!」
「でもロイ、僕はもう18歳だよ……」
「いいえ、大人も子供も関係ありません! 第一マルスはまだ18歳じゃないですか! 僕の軍にも100年以上生きていても雪を見るたびはしゃぐ人だっていました!」
「ロイ? それはもしかしてマムクートじゃあ……?」
どうやらそれは図星だったらしく、ロイは一瞬たじろいだが、それでもマルスの腕を放そうとはしない。
そして、リンクと、中々起きないからカービィに飲み込まれそうになったというダークが後から来て、降り積もる雪を見て、ダークがこの一言。
「……これはなんだ?」
「ダーク……もしかして、雪知らないの?」
黙ってダークは頷き、降り注ぐ雪の一粒を手の平にのせる。手の平にのせた雪がすぐに溶けてしまったことにダークは少し驚いて、
「これが……雪……?」
その言葉に、ロイの血相が変わった。マルスの腕を掴む手とは反対の手でダークの腕を掴んで、
「雪で遊んだことが無いなんて絶対損に決まってます! 雪はこんなに綺麗で、楽しいのに皆どうして……ぶっ!」
ロイの言葉が途中で遮られて、ロイの顔面に雪玉が命中した。噴水の近くに居た子供たちがそれぞれ歓喜の声を上げる。
「このやろー……お返しだ!」
悔しそうにそう叫んで、ロイが足元にあった雪をかき集めて丸め、雪玉をつくる。それを子供たちに作っては投げ、作っては投げていく。ロイに雪玉を投げた子供たちは嬉しそうな叫び声を上げながらロイの雪玉から逃げるべく、散り散りに走り出していく。
マルスも地面の雪をかき集めて雪玉を作り、ロイに手渡していく。雪は思っていた以上に冷たくて、更に今日は手袋をつけていなかったので、もう指先の感覚が無かった。それでも一心不乱に、マルスは雪玉を作ってはロイに手渡す。
ロイの雪玉を投げるペースがより一層速くなって、子供たちの嬉しそうな声が更に大きくなり、自分たちにも雪玉が投げられてくる。
その時、後ろでリンクとダークが小競り合いをしているようだった。必死に雪玉を作っているマルスとロイの耳には話の内容は届かなかったのだが。
だが楽しい時間を粉々に砕くかのように、リンクの叫び声が、
「皆伏せてー!」
言われたとおり中庭に居た全員が伏せると同時に、マルスの背後から何かが投げられた。一瞬雪玉かと思ったが、投げられた何かは黒かった。それは地面にぶつかると同時に爆発を起こし、辺り一帯に強い風を巻き起こした。
「な、何……?」
振り返ると、あわあわと焦った顔をしているリンクと、リンクとはうって変わって、雪の温度にも勝るとも劣らないほど非常に涼しい顔をしているダークが立っていた。
「何で爆弾を投げるの? これは雪合戦だよ? 雪玉を投げるんだよ?」
「白い爆弾を投げているのかと思った」
「爆弾ならちゃんと爆発するだろ……?」
呆れたようなリンクの言葉に、ダークはやっと投げているのが雪玉だと気付いたのか、
「……そうなのか!」
あまりに世間知らずなダークに、三人揃って同時に溜息をついてしまった。しかし、三人の溜息をよそに、子供たちは笑顔でダークに駆け寄って、
「ねぇダーク、今のすっごいおもしろかった! もう一回やってよ!」
「わかった。じゃあもう一回……」
まだ火をつけていない爆弾を取り出したダークの腕をリンクは掴み、
「ネス? ここは寮の中だよ。爆弾なんて本当は使っちゃいけないんだ。だから駄目」
それに対し、ネスだけでなく、子供リンクやポポ、ナナまでつまらなさそうに口を尖らせた。それでもステージ以外の場所で武器を使うのは禁止されているのはここに居る全員知っているので、ちゃんとリンクの言ったことを理解してくれて、また雪合戦に戻った。
「マルスも……雪は初めて見るんだっけ」
リンクの問いに、マルスは苦笑いを浮かべて、
「うん。そうだよ……流石に爆弾を投げたりはしないけどね」
「綺麗だな」
コートについた雪を払い落としながら、ダークが呟く。リンクは大きく溜息をついて、
「……また爆弾投げたりなんてしないでよ」
「お前に怒られたからもうしない」
「怒られなかったらするの?」
ダークは少し考え込み、そして、
「……するかもしれない」
これでは本当にダークが反省しているのか、していないのかよく分からない。リンクはまた大きく溜息を吐いた。
しかしそんなリンクの悩みをよそに、ダークは近くの木に降り積もっていた雪を少しだけ手でつまんで、それを迷わず、口の中に放り入れた。
朝から突拍子も無い行動ばかりしているダークに、リンクがすっかり呆気に取られていることに気付いたのか、ダークはどうした。とリンクに問いかけた。
「……なんで雪を食べてるの?」
「ん……」
ぶっきらぼうな返事をして、ダークが中庭の奥のほうを指差した。ダークが指を指した方向には、実においしそうにシロップのかかった雪を頬張っているヨッシーとカービィが居た。
二匹の近くには、何本ものシロップの瓶が転がっていた。その瓶の数から、いったいどれくらいの雪を食べたのかが容易に想像できた。
「食ったら駄目なのか」
「そんなの駄目に決まってるだろ……」
「あいつらは食ってるのに?」
「あの二匹は胃が特別なの。だから平気なだけ! とにかく君は食べちゃ駄目だ!」
そう怒鳴ってリンクはダークの手の中にあった雪を、ダークの手を掴んで地面に落とした。一瞬ダークが名残惜しそうな表情をしたが、それもお構い無しにリンクはダークの手を掴んだまま、寮内へと引き摺っていた。
「雪の日に君を外に出したら、ろくなことにならないことだけはよーくわかったよ」
「……それは褒め言葉なのか」
「違う!」
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